ラブアン法人の国内事業について

2019年の法改正において、一律2万リンギットの税制は撤廃するがラブアン法人がマレーシア居住者との(リンギットでの)取引を認める方向に進んでおります。
詳細はまだ決定しておりません。改正が確定しましたらこちらにアップいたします。

ここではラブアン法人を設立し、マレーシア国内での事業活動を検討されている皆さまのために要点をいくつか整理いたします。

マレーシア国内事業について ラブアン法人を活用し、マレーシア国内で事業活動を行うことは可能か?
ラブアン就労ビザを取得し、マレーシア国内で就労することは可能か?

弊社ではラブアン法人の設立及びマレーシアへの移住を検討されるお客様より、上記のような質問を非常に多くいただいておりますが、実はこうした質問はラブアン当局や信託会社にとっても回答が非常に難しい質問でもあります。


 

【ラブアン就労ビザを活用したマレーシア国内での事業活動は極めて難しい】

マレーシアは世界でも珍しい1国2制度が採用されている国であるため、マレーシア法人法(Act.1965)とラブアン法人法(Act.1990)が併存しています(中国―香港の関係と同様です)。

このように、ラブアンはマレーシアの中でも税制が異なる極めて特殊な地域となっているため、ラブアン法人の活用はマレーシア以外の海外との取引を前提とした取扱いとなっている点を、まずは十分にご理解ください。

マレーシア法人(Act.1965) ラブアン法人(Act.1990)
払込資本金が250万リンギット以下の場合[※1] 課税所得50万リンギットまで19% 商業活動を行う場合 3% または 一律2万リンギット
課税所得50万リンギットを超える分 24%
払込資本金が250万リンギット超の場合 24% 商業活動を行わない場合 0%(非課税扱い)

※1 グループ会社内に払込資本金が250万リンギット超の関連会社がある場合を除く。

主な活用方法
マレーシア法人(Act.1965) マレーシア国内を主な取引対象(オンショア取引)
ラブアン法人(Act.1990) マレーシア国外を主な取引対象(オフショア取引)

このように、ラブアン法人は本来の性質上、オフショア取引(国際取引)を行う法人であるため、マレーシア国内での事業活動及びマレーシア居住者(法人含む)との取引は原則として禁止されています。

オンショア取引の例: クアラルンプールで日本料理屋を営業する場合
ジョホールバルでネイルサロンやピアノ教室を開催する場合
ラブアン島で免税ショップを開業する場合
→ この場合はマレーシア国内での事業活動が行われているためオンショア取引となります。
オフショア取引の例: フランスからワインや香水を輸入し、日本や中国に輸出する場合
ラブアンのサーバーを利用して日本向けのオンラインショッピングやアフィリエイトビジネスを行う場合
→ この場合はマレーシア国内での事業活動が行われていないためオフショア取引となります。

 

【ラブアン就労ビザの本質とは?】

すでにご存じの通りマレーシア政府がラブアン島を経済特区と指定し、オフショア金融センターが設立され、1国2制度が採用されています(参考:「ラブアンオフショア金融センターについて」)。

ところが、当初の想定とは異なり、ラブアン自体があまり注目されなかったため、マレーシア政府はラブアン就労ビザに西マレーシアの移住特典を付与し、新たな振興を図ることとなりました。

その結果、ラブアンの価値が再検討され、ラブアン法人の設立件数が増加、このスキームを活用したマレーシア移住者の数は年々増加傾向にあります(※2020年まで当制度の存続が決定。ただし延長される可能性あり)。

しかしながら、マレーシア全体はタックスヘイブンではないため、ラブアン側の論理にすべてを巻き込まれ、マレーシア全体がタックスヘイブンとなってしまうことに対し、マレーシア政府は非常に警戒しています。

このように、1国2制度という複雑な二重基準の中、ラブアン就労ビザの本質は「会社さえ設立すれば、ひとまずマレーシア西部の半島側には住める権利を付与する」という一語につきます。

なぜならば、無条件に西マレーシアでの事業活動を認めてしまうと、ラブアンでは法人税が低税率という極めて特殊な形態を取っているため、誰もがマレーシア法人の設立を敬遠し、代わりにラブアン法人を設立することになるからです。これでは、マレーシア全体がタックスヘイブンになってしまいます。

(例として、香港と中国の関係を考えてみてください。香港法人で中国国内で事業活動を行えるとしたら誰もが香港法人を設立し、中国法人を設立しようとは思わないでしょう。香港の法人税率は16.5%、中国本土の法人税は25%ですから、中国がこの方法を認めてしまうと、中国全体がタックスヘイブンになってしまうわけです)

そのため、西マレーシア(クアラルンプールやジョホールバル、ペナンなど)で事業活動を行う(お金を稼ぐ)という行為はマレーシア政府としては公式的には認めていません(参考:「マーケティングオフィスの設置」)。

以上のような理由から、ラブアン法人を活用したマレーシア国内での事業活動は困難であるというのが現状と言えます。

ただし、マレーシアでは就労ビザを持たない労働者が外国人就業人口の過半数を超えるとも言われており、入国管理局は実態を把握しきれず、仕事をしていてもバレにくいという現状もありますが、弊社ではこうした形態をお勧めできないという現状をご承知ください


 

【ラブアン就労ビザをマレーシア移住手段として活用する】

さて、そのうえで、マレーシアで事業活動を行うことを検討されている皆さまにとっては、ラブアン就労ビザはとても魅力的な選択肢の1つと思われます。

それは以下のような際立った特色があるためです(参考:「ラブアン就労ビザの概要」)。

ラブアン就労ビザの特色 1) 他のマレーシアビザに比べて安価である(MM2Hビザなどは初期投資がかかります)
2) ビザの発行が他のマレーシア法人に比べて、スピーディであること
3) 不法入国ではないので安心して地盤などの環境が整えられること

また、上記に加えラブアン就労ビザが比較的簡単に入手できる理由としては、ラブアン法人自体が国際取引を行うことを前提としてビザが発行されている点が大きな要因として挙げられるでしょう。

たとえば、マレーシア法人の就労ビザを取得するためには、マレーシア連邦の国益に貢献できる人物か否かが審査され、さらにはマレーシア人の雇用を奪うような事業は当然ながら敬遠されます。こうした傾向は香港やシンガポールも同様です(特にシンガポールは自国民の雇用を増やさないかぎり外国人の就労ビザの発行枠を制限するという、いわゆるオンショア化の傾向にあります)。

これとは正反対に、ラブアン法人自体はマレーシアの国内取引を行わないことを条件として外国人に就労ビザの発行を行い、マレーシアへの移住を認めているため、そもそもの前提条件が全く異なっているといえます。

香港法人の就労ビザ
  • 香港の国益に貢献できる人物か否か
  • 香港人の雇用を奪うような事業か否か
シンガポール法人の就労ビザ
  • シンガポールの国益に貢献できる人物か否か
  • シンガポール人の雇用を奪うような事業か否か
マレーシア法人の就労ビザ
  • マレーシアの国益に貢献できる人物か否か
  • マレーシア人の雇用を奪うような事業か否か
ラブアン法人の就労ビザ
  • マレーシアの国内事業に関わらない人物か否か
  • マレーシア人の雇用を奪うような事業か否か

たしかにラブアン就労ビザを取得し、単に移住しただけではマレーシア国内事業を行うことは原則として禁止されている状況は変わりません。

しかし、将来的にマレーシア法人を設立することを前提とした場合、ラブアン就労ビザを「マレーシアへの当面の居住権の確保」として活用されることを検討されてみてはいかがでしょうか?


 

【ラブアン法人を活用し、国内事業を行うには?】

それでは、理想の環境であるマレーシアに居住しながら、就労もできるという問題点をどのように解決していけばいいのか?

弊社では以下のようなスキームを提案したいと存じます。

まず、ラブアン法人における就労の定義は「サービスの提供によってマレーシア居住者から金銭を受け取る行為か否か」という意味合いであるとお考え下さい(「就労ビザ」という名称が非常にややこしいのですが、ラブアンのビザは移住ビザとお考えください)。

そのため、ラブアン法人を設立し、国内事業(例:ネイルサロンやピアノ教室など)を行った場合、マレーシア居住者との取引は残念ながら行うことができません(ピアノ教室を例に挙げれば「物件を借りてピアノ教室を開く」、「生徒さんと直接契約する」といった行為はマレーシア法人の就労ビザが必要となります)。

①技術サービスを提供→ ②ピアノレッスンを提供→
  • お客様の会社
  • (ラブアン法人)
  • 音楽教室を行う会社
  • (マレーシア法人)
  • 生徒さん
  • (マレーシア居住者)
←コンサルタント料を支払い④ ←月謝等の支払い③

上図のようにピアノ教室を例に挙げた場合、以下のようなフローとなります。

居住者との取引 ①お客様の会社(ラブアン法人)が音楽教室を行う会社(マレーシア法人)と契約をする
②お客様の会社(ラブアン法人)が生徒さん(マレーシア居住者)に技術サービスとしてピアノを教える
③生徒さん(マレーシア居住者)は月謝を音楽教室を行う会社(マレーシア法人)に支払う
④お客様(ラブアン法人)は音楽教室を行う会社(マレーシア法人)からコンサルタント報酬を受け取る

ラブアン信託会社及びラブアン当局の見解によれば、「上記の方法に限ってのみ、ラブアン法人からマレーシア居住者へのピアノレッスンを行うことができる」との回答でした。

そのため、上記の例の場合、ラブアン法人がピアノレッスンを行うためには、マレーシアの音楽教室などを開講している会社と契約し、生徒さんにピアノを教え、コンサルタント報酬の名目で金銭を受け取るという方法を取る以外にないようです。

※マレーシア法人法に規定される「居住者」の定義は「マレーシアに居住する自然人及び法人」となっているため、上記は非常にグレーゾーンな取引スキームであることはご承知おきください。

なお、上記の方法で事業を行うにあたり、注意点は以下の3点です。

マレーシア居住者との取引に関する注意事項 ①ラブアン法人の法人税が3%→25%に変更となる
②コンサルタント報酬をリンギット以外の通貨で受け取る必要がある(アメリカドル、日本円など)
③取引を行ってから10日以内にラブアン金融庁に取引内容を提出する必要がある

※遅延した場合は1日ごとに500RM、最大で10,000RMの罰金が課せられる

弊社提携先であるいくつかの信託会社では、「ラブアン法人を設立してマレーシア国内で事業活動を行うことについては、①「税制メリットもなく」、②「会計監査も必須」であり、③「法令遵守が極めて厳格」なため、決しておすすめはできない」との見解です。

このような方法であってもマレーシアに移住し、国内事業に活用されたいということであれば、弊社でもスキーム構築に関して可能なかぎり協力させていただきますので、お気軽にお問い合わせください。

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