マネジメントオフィスの設置

マネジメントオフィスとは、営業所のことを言います[※1]。

ラブアン法人設立の段階では、営業所の設置は任意とされており、必ずしも開設する要件はありませんが、「就労ビザの取得を希望される場合はマネジメントオフィスの開設が必要になる」、というのが最近のビザ取得事情となっています。

なお、法人登記が完了した時点では、書面上の法人格を取得したにすぎず(いわゆる「ペーパーカンパニー」の状態)、多くの事業者の方にとってはマネジメントオフィスの開設が重要な課題になると考えられます。

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マネジメントオフィス開設の検討にあたり、以下の点に留意する必要があります。


 

□ タックスヘイブン対策税制

タックスへイブン対策税制(外国子会社合算税制)とは、「税金が無税または極めて低い税率の国や地域に所在する子会社等を通じた租税回避行為を規制するための制度」のことをいいます。

タックスへイブンで得た所得は、利益を配当として本国へ還流させないかぎり、本国での課税タイミングは留保され、そのまま再投資や運用、貸付などにまわすことが可能となります。

しかし、このような行為を無条件に認めてしまうと本国の税収が大幅に減ってしまうため、上記のような租税回避行為(不自然な節税スキーム)を規制するために、各国政府は対策を行っています(各国ともに細かい条件は異なります)。

現在、日本のタックスヘイブン対策税制では「法人所得税が存在しない国・地域、および税額が20%以下の国または地域が対象」となっており、ラブアンも本制度の対象に含まれることになります。

たとえば、日本の企業が設立した外国子会社の法人所得は、日本の親会社に配当しない限り日本では課税されませんが、一定の基準を満たしていない場合、日本の法人税と地方税が合算課税されることになります。

タックスヘイブン対策税制が適用された場合、ラブアンの子会社に対しても日本の法人税等が課税対象となりますので節税目的でラブアン法人の活用を検討される方はこの点には注意が必要です。

もっとも、この税制の趣旨はあくまでも租税回避の防止目的にあるため、特定外国子会社等が現地での租税負担が低い場合であれ、「租税負担軽減のために存在しているのではなく、その存在に経済的合理性が認められるのであれば、あえて本制度に基づく合算課税を行う必要はない」ということになります(いわゆる「適用除外基準」)[※1]。

適用除外基準とは①「事業基準」、②「 実体基準」、③「管理支配基準」、④「非関連者基準」、⑤「所在地国基準」の5つの基準のことをいいます(※④と⑤は業種に応じていずれかが適用されます)。

このうち②「実体基準」に、「主たる事業に必要な固定施設を本店所在地に有していること[※2]」とされていることからも、ラブアン島内にマネジメントオフィス(営業所)を開設せずに商取引を行ってしまうと、適用除外基準を満たせず、日本の法人税率が適用されてしまうため、節税スキームが無効となる点に注意が必要です。

ラブアンではマネジメントオフィスを設置するにあたり、レンタルオフィスを活用される方が大多数を占めていると思われます。なかには「電話受付」や「郵送物の転送サービス」など、いわゆるバーチャルオフィスとしての契約のみをしているケースも見受けられますが、このサービスの本来の趣旨はあくまでも「業務を効率化するためのサービス」であり、「マネジメントオフィスは物理的に存在していなければ実体基準を満たせない」というのが税制上の見解となります(参考:「外国子会社合算税制(タックスヘイブン対策税制)」)。

※1 2010年度の税制改正により、いわゆる地域統括会社が一定の場合適用除外基準を満たすよう上述の事業基準、非関連者基準の見直しがなされました。その一方で、「適用除外基準を満たす外国子会社等であっても、一定の資産性所得を有する場合は、株式等の保有割合に応じて内国法人の所得に合算して課税する」こととされました。


 

□ マレーシア本土との租税条約

ラブアンはマレーシア連邦に帰属していることから、マレーシア本土との租税条約を考慮する必要があります。

ラブアンはマレーシア連邦に帰属しますが、税制に関してはマレーシア本土とは異なる1国2制度が採用されています(例として香港法人が中国本土と取引する際の租税関係と同様です)。

マレーシア連邦の租税要件として、「ラブアンを通して請求した売上げ、ラブアン内で発生した売上げについては、ラブアン法人法の税率が適用される」と定められています。

この条件に関して、いくつかの信託会社(トラストカンパニー)では「マネジメントオフィス(営業所)を設置しないかぎり、上記の要件を満たせない」と説明している会社もあるようです。

もっとも、外国法人の場合、タックスヘイブン対策税制の適用回避策として営業所を設置している事情もありますが、それ以外にもタックスヘイブン対策税制を導入していない国(例として香港やシンガポール)の事業者であっても営業所を設置しているケースが見受けられます。

たとえば、①「ラブアン島内に営業所を構えず」に②「ラブアン法人の就労ビザ」で③「クアラルンプールに居住」し④「インターネット上でビジネスを行う」といった事例について考えてみます。

たしかに上記の事例では、ラブアン法人を設立後、ラブアン就労ビザを取得し、クアラルンプールに居住しながら、諸外国との間で商取引(この場合はオフショア取引)を行っているため、ラブアン法に定められた範囲で合法的な商取引を行っています。

しかしながら、マネジメントオフィスを設置せずにインターネット上でラブアン法人の商取引を遠隔操作してしまうと、場合によっては「マレーシア法人による商取引である」とみなされてしまう可能性が少なからずあるようです(この点は明確な規定がないため、「可能性が少なからずある」という表現に留めました。この点は、一国二制度の恩恵を享受し、マレーシア本土に居住できる制度ゆえの特有の問題でもあります)。

ゆえに上記の事例の場合、ラブアン法人法に準拠する税率(3%又は一律2万リンギット)ではなく、マレーシア本土の法人税率(19~24%)が適用されてしまうため、マレーシア本土―ラブアン間の租税回避行為が無効とされてしまいます。

これでは、タックスヘイブン対策税制の要件を考慮する以前に、マレーシア本土との租税条約の要件がクリアできなくなってしまい、多大な労力と経費を支払い、ラブアン法人を設立し運営するメリットが大幅に低減してしまいます。

そのため、マレーシア本土との間に生じる法令リスクを回避する観点からも、マネジメントオフィスの開設は十分検討する余地があると考えられます。


 

□ ラブアン島の不動産事情

すでに述べたように、多くの事業者から「節税対策」として活用されるラブアン法人ですが、ラブアン島内でマネジメントオフィスの開設が可能な物件を探す段階に至ると、少なからず困難な状況に直面します。

まず、ラブアン島は総面積わずか85㎢、直線距離にして9km×9km程度の非常に小さな島であり、事業所として契約できる物件の絶対数が少ないために、賃貸価格がマレーシア本土に比べて割高な傾向にあります。

さらには、営業所としての利便性を考慮した場合、①「金融センターから近い場所」、②「ITインフラが整備されている場所」などを考慮すると、商業地区であるバンダルラブアン地区周辺を探すのが最適な選択肢になると考えられます(※バンダルとはマレー語で「市街地」を意味します)。

バンダルラブアン地区は、赤枠で囲まれた地区が該当しますが、わずか0.8km×1km程度の非常に狭いエリアに政府系施設や商業施設、オフショア金融センターなどが集中しています。

ラブアンではブロードバンド回線を敷設する際、TM Point社のADSL回線の導入が一般的となっていますが、上記バンダルラブアン内でも場所によっては回線速度が異なります。弊社が調査した結果、4Mbpsの地域と8Mbpsの地域が混在しています[※4]。

また、ラブアン島内全域の電力はSabah Electricity社からの供給を受けていますが、電力の供給量が安定していないため、ごく稀にですが島内全域で大規模な停電に見舞われることがあります(この問題はラブアン島に限らず、中進国や発展途上国で電子商取引を行う事業者にとっては致命的な問題となります)。

このようにラブアン島内特有のインフラ事情もあることから、弊社ではラブアン島内のネットワークを最大限に活用し、クライアントの皆さまのニーズを満たした物件をご紹介できるよう努めて参ります(参考:「マネジメントオフィスの物件事情」)。

※4 2016年の年初より2017年に向けてラブアン島内に光ファイバー回線のインフラ工事が進んでいるため、回線速度の問題については近い将来改善される可能性があります。

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