ラブアン法人のメリットとデメリット

ラブアン法人を設立することによるメリットとデメリットを整理しました。

これからラブアン法人の設立を検討されている皆さまの参考情報として、判断材料としてお役立ていただければ幸いです。

あらゆる物事には必ずメリットとデメリットが存在します、双方を比較したうえで客観的な視点で最終判断をしていただきますようお願いいたします。

※ここでは弊社が3年以上ラブアン島での事業活動を通して感じたメリットとデメリットを包み隠さず書いておりますので、経験談として非常に参考になると思います。

***

【ラブアン法人のメリット】

ラブアン法人のメリットは以下のとおりです。

1. 100%外資のみで設立が可能である。
ラブアン法人はローカルの資本要件がなく、100%外国資本による設立が認められています。
2. 1人株主・1人取締役という最小単位の法人形態で設立が可能である。
ラブアン法人は1人株主・1人取締役の法人形態で設立が可能であり、株主と取締役は兼任が可能です。
3. 定額税制(最大税額20,000リンギット≒60万円)を採用しているため、法人税が累進課税にはならない[※1]。
ラブアン法人は年度ごとに3%又は20,000リンギットの2種類の納税方法を選択することが可能です。法人税の最大上限税額 が設定されているため、いくら稼いでも20,000リンギット以上の法人税は発生しません(参考:「ラブアン法人の租税優遇措置」)。

※1 1リンギット=30円で計算

ラブアンの法人税の「定額2万リンギット」が撤廃になりました。法人税としては、「利益の3%」のみが適用される、ということになります。

4. 最大税額を払うと会計監査義務が免除される。
20,000リンギットの納税方法を選択した場合は会計監査を行う必要がありません。なぜならば、最大税額を払った企業にわざわざ税務調査をする必要がないからです。こうして考えてみると、ラブアン法人の本質的な価値は3%という低税率ではなく、20,000RMの定額税額にこそ真のメリットがあることがお分かりいただけると思います。会計監査に要する2~3週間の利益を生まない無駄な時間をわずか50万円程度で買えてしまわけですから、「お金を払って時間を買う」という、富裕層のニーズを見事に満たしているといえます。

※会計帳簿を作成し、信託会社で保管する義務はあります。弊社顧問先のクライアントの皆さまはP/L(損益計算書)とB/S(貸借対照表)のエクセルシートをお渡ししますので20分程度で自動計算にて書類が完成します。

利益の3%を納税する前に、かならず会計監査を受けなければなりません。

5. ラブアン就労ビザを取得し、マレーシアに移住した場合、年間の半分をマレーシアで過ごすと所得税が4,000RM≒12万円程度で済む[※2]。また、株主配当は非課税扱いとなる。
マレーシアの所得税法では182日ルールが採用されています。年間の182日をマレーシアで滞在した場合は税務居住者とみなされ、取締役の所得税は50%免税扱いとされ、所得税の納付額が4,000RM≒12万円程度となります(参考:「ラブアン法人取締役の個人所得税について」)。

また、1人株主・1人取締役の場合は株主配当による個人への支払いが非課税扱いとなります(年2回程度まとまった金額の非課税での受け取りが可能となります)。

※2 1リンギット=30円で計算

6. ラブアン就労ビザはオフショアビザにもかかわらず、ラブアン島内だけでなく、西マレーシアにも居住が可能である。
 ラブアン法人の就労ビザはオフショアビザでありながら、「世界で唯一経済特区外の居住が認められている就労ビザ」という極めてユニークな特徴を有しています。ラブアン法人の就労ビザを取得すると、ラブアン島内だけでなく、西マレーシアのクアラルンプールやジョホールバルなどにも居住することができます。これにより香港やシンガポール、タイなどにも日帰り出張が可能となり、大きな地政学上の優位性が生まれます(参考:「就労ビザの申請要件」)。
7. ラブアン就労ビザの発給要件には、ローカルの雇用要件がない。
ラブアン法人には外国人の就労ビザを発給する要件としてローカルの雇用要件がありません。香港法人(外国人1名に対して2名のローカル雇用)、シンガポール法人(外国人2名に対して1名のローカル雇用)にはローカル雇用要件があることを考慮した場合、海外移住希望者にとっては非常に取得しやすい就労ビザであると言えます(参考:「ラブアン法人の国内事業について」)。
8. ラブアン就労ビザには自動的にTIN(納税者番号)が紐づけられるため、税務居住者としての正当性を担保することが可能。
ラブアン法人の就労ビザは発給後にTIN(納税者番号)が紐づけられます。マレーシアでは退職者向けのMM2Hビザが非常に有名ですが、このビザの本質は観光ビザ(Social Visit Pass)であるため就労行為は不可、したがって納税者番号は取得できません。TINを取得することは、当該居住国に就労目的で移住することの重要な客観的根拠となります(参考:「MM2Hとラブアン就労ビザ」)。
9. ラブアン法人はマレーシアの外貨規制上の『非居住者』として取り扱われ、外貨規制の適用対象外となる。
ラブアン法人はマレーシアの外貨規制上の『非居住者』として取り扱われ、ラブアンオフショア口座を経由した取引については外貨規制の適用対象外となり、資金移動に上限設定がなくなります(参考:「ラブアン国際事業センターについて」)。
10. 国外源泉所得非課税主義を採用している国(香港・シンガポールなど)の税務居住者が設立した場合、本国の課税制度からは切り離され、大きな節税効果が期待できる。
香港やシンガポールなど、自国の領土外で稼得した利益に対し非課税となる国・地域に居住されている方にとっては、ラブアン法人を設立することにより、大きな節税効果が期待できます。

***

【ラブアン法人のデメリット】

ラブアン法人のデメリットは以下のとおりです。

1. 自力で運用するためには、ある程度の英語によるコミュニケーションができることが前提となる。
ラブアン法人の事業活動においては、国際商用言語である英語が共通言語として採用されています。したがって、英語によるコミュニケーションが著しく困難な方は運用が難しいとお考えください。

※弊社が顧問となり、日本語による運用サポートも可能です。

2. 会社秘書役の設置が義務付けられている。
ラブアン法人ではカンパニーセクレタリー(会社秘書役)の設置が義務付けられています。カンパニーセクレタリーは日本では馴染みのない制度ですが、司法書士のイメージに近く、主に書類関係の仕事をサポートしてくれます。ラブアン法人を運営する上ではカンパニーセクレタリーの設置が義務付けられており、ペーパーカンパニーとして運営するだけでも、年間の秘書役代金が2,000USD~2,500USD程度発生します(※年間登録住所料金及び法人ライセンス料金を含む)。(参考:「ラブアン法人の概要」)
3. 決算月が12月と決められているため、任意で変更することはできない。
ラブアン法人では決算月が12月と決められているため、任意で変更することはできません。 例えば12月に設立した場合、事業活動を行っていない状態(休眠状態)でも会計帳簿を作成する必要があります。このような場合は意図的に年度末に設立申請を出し、新年度に設立を延期するなどの工夫が必要です(参考:「ラブアン法人の概要」)。
4. マレーシア国内居住者(個人・法人含む)との取引は原則として禁止されている。
ラブアンのようなオフショア法人は原則として、「自国領土内で事業活動を行わないこと」を条件として法人税が非常に安く設定されています。このような性質を有する法人のことをIBC(Internatinal Business Company = 国際事業取引会社)といいます。もし、IBCに自国領土内での国内取引を無制限に認めてしまうと、誰も税率の高いオンショア法人を設立しなくなり、国全体がタックスヘイブンになってしまいます。このような理由により、ラブアン法人はA国とB国を仲介するような国際取引にのみ活用することが認められているわけです(参考:「ラブアン法人の国内事業について」「タックスヘイブンと中継貿易」)。

※ラブアン法人を活用して国内取引を行った場合、取引の事実のあった日から10日以内にLabuan FSA(金融庁)への書面による提出が義務付けられ、遅延した場合は1日あたり500リンギット、最大で10,000リンギットのペナルティーが課されます。したがって、ラブアン法人をマレーシアの国内取引に活用することはおすすめしません。

2019年の法改正において、一律2万リンギットの税制は撤廃するがラブアン法人がマレーシア居住者との(リンギットでの)取引を認める方向に進んでおります。
詳細はまだ決定しておりません。改正が確定しましたらこちらにアップいたします。

5. マレーシアリンギット建ての決済が原則として禁止されている。
ラブアン法人ではマレーシアリンギット建ての取引が原則として禁止されているため、USD建てやJPY建てで取引をすることになります。 リンギット建ての取引は、ローカルスタッフへの給与支払い、事業所の家賃支払い、出張時の航空券・ホテル代など一部の費用にかぎり利用が認められています。

※一部のマレーシアオンショア銀行では法人設立直後であってもデビットカードを発行してくれる銀行がありますが、マレーシアの銀行では現地通貨であるリンギット口座から引き落としがなされます。このカードはあくまでもマレーシアの事業費決済を自動化する際などに使うための機能であり、他の用途としてはリンギット決済が認められていないためご注意ください。

※リンギット以外の通貨からカード引き落としを希望される場合は、ラブアン法人名義で香港やシンガポールなどの銀行口座を開設するなど、一定の工夫が必要となります。

2019年の法改正において、一律2万リンギットの税制は撤廃するがラブアン法人がマレーシア居住者との(リンギットでの)取引を認める方向に進んでおります。
詳細はまだ決定しておりません。改正が確定しましたらこちらにアップいたします。

6. 就労ビザ保有者で年間182日のマレーシア滞在要件をクリアできない場合、所得税率が一律28%となる。
マレーシアの所得税法では182日ルールが採用されており、182日以上の滞在者は税務居住者、182日未満の滞在者は税務非居住者と定義されます。税務居住者にとっては所得税の減税メリットが享受できる一方で、税務非居住者は一律28%が課税されてしまうため、所得税額が一気に跳ね上がることになります(参考:「ラブアン法人取締役の個人所得税について」)。

※就労ビザ保有者は年間最低でも60日以上をマレーシアで滞在していない場合、原則として次回のビザ更新ができません。

※就労ビザを保有していない場合、上記ルールは当てはまりません。マレーシア国外在住者は税務居住国の所得税法にしたがって課税されます。

7. 就労ビザがない場合でも、給与所得についてはマレーシアで個人所得税の申告が必要となる。
ラブアン法人は給与所得に対して注意が必要です。例えば、海外在住者で毎月ラブアン法人から給与所得を受け取っている場合はマレーシアで個人所得税の申告が必要となります。この場合、株式配当として年2回程度、個人に収益を移転することにより非課税にできますので、個人に収益を移転させる場合は一定の工夫が必要となります。

※ラブアン法人では株式配当は非課税扱いとなります。ただし、これらを毎月継続的に発生させた場合は、給与としてみなされ課税対象となるため、年2回程度の支払いに留めておいたほうがベターです。

8. 就労ビザの保有者はラブアン島に住まなくても事業所と居住住所を設置しなければならない。
ラブアン就労ビザは本来的にはラブアン島内で就労するためのビザです。ラブアンは地政学上は東マレーシアに帰属しますが、行政上は連邦直轄領であるため西マレーシアに帰属することになります。つまり、ラブアン島と西マレーシアの往来(西マレーシア内の移動)にはパスポートにスタンプが押されることがないため、西マレーシアに居住できてしまうという不思議な現象が起きてしまいました。この状況をうまく活用して(ラブアン行政の意思に反して)多くの富裕層がラブアン就労ビザを取得することになりましたが、さすがにラブアン行政もラブアン島内で消費が起こらない状況が問題視され、2015年3月よりせめてラブアン島内に事業所と居住地は構えてほしいという事でガイドラインが改定されることになりました(参考:「就労ビザの申請要件」)。

※弊社では100部屋以上のリース物件を自社管理しておりますので、クライアントの皆さまはラブアン渡航時に署名いただくだけで煩雑な手続きを回避することが可能です。余計な固定費を請求せざるを得ない以上、お金で時間を効率的に買っていただけるよう仕組み作りを最適化しています(参考:「マネジメントオフィスの物件」)。

9. 就労ビザの保有者は2年毎の更新手続きが必要となる。
ラブアン就労ビザは2年ごとの更新が必要となり、更新は有効期限3ヶ月前までに申請書の提出が必要となります。ラブアンビザは、就労目的でマレーシアへ移住できるメリットがある一方、よく比較されるMM2Hが10年更新であることを考えると、相対的に手続きがとても煩雑になります。例えば「パスポート全ページの認証を再度取得する」「学歴証明書を再取得する」などの一時帰国の手間や、「更新前に法人が休眠状態でないことを証明するための残高履歴の提出」「雇用契約書に基づき毎月一定額の給与が振り込まれていることを証明するための残高履歴の提出」などの事務作業も発生します(参考:「ラブアン就労ビザ更新に必要な書類」)。

※弊社顧問先のクライアント様は極力負担にならないように更新時の必要書類を可能なかぎり保管してあります。

10. 全世界課税所得主義を採用している国(日本・インドネシアなど)の税務居住者が設立した場合、本国での合算課税対象となり節税効果は見込めない。
日本やインドネシアなど、自国の領土外で稼得した利益(世界中どこでも稼得した利益)に対しても合算課税となってしまう国・地域に居住されている方にとっては、ラブアン法人を設立されても、節税効果は期待できません。特に香港・シンガポール・ラブアンは実行税率が20%以下の国・地域に分類されるため、タックスヘイブン対策税制の適用対象となり、個人・法人ともに合算課税の対象となる点にご注意ください(参考:「外国子会社合算税制」」)。

※タックスヘイブン対策税制の適用除外要件をクリアすることにより、合算課税から切り離す効果が期待できますが、これを実行するためには膨大な手間と費用がかかります。それらの諸々のコストを考慮すると、結果的に本国に納税したほうが安くなるかもしれません。

***

ラブアン法人は香港やシンガポールの富裕層が節税対策として使う、アジアで最も税率の低い金融経済特区となっています。ラブアン法人では上限税額(20,000リンギット≒60万円)があらかじめ設定されており、所得が高ければ高いほど実行税率が低くなるため、富裕層優遇政策を採用している金融経済特区であるといえます。

2,000万円×3%を計算すると60万円となります、ラブアン行政はおそらく最低でもこの水準を上回る所得層をターゲットにしていると考えられます。年間所得2,000万円までは法人税が60万円程度ということは、年間所得で2,000万円を超えた金額は法人税が非課税になるのと同じ意味を持ちます。

したがって、最低でも年間で2,000万円を超える所得水準がなければ、ラブアンでの税制上のメリットは享受できないと言えます。

今やインターネットに接続すれば世界中どこへでも瞬時にアクセスできる時代となりました。特にIT関連事業者や投資家など、物理的な制約から解放され、時間と場所を選ばずに仕事ができる方には向いている法人であるといえるのではないでしょうか。

上記に関するご質問・ご不明点等ございましたら弊社までお気軽にお問い合わせください。

お問い合わせ