ラブアン法人の証券投資と税制

証券取引を行う場合、課税方式は「配当益課税(インカムゲイン)」と「売却益課税(キャピタルゲイン)」の2つに分類されます。

ここでは、ラブアン法人名義(オフショア法人名義)で株式や債券等の証券取引を行う場合の税制上の見解について要点を整理します。

2016年6月現在の情報となります、今後変更される場合があります


 

【証券取引にかかる配当益課税(インカムゲイン課税)の取扱いについて】

配当益課税(インカムゲイン課税)は取引を行う市場ごとに異なり、当該銘柄の本店所在地国の配当税によって税率が異なります。株式を保有する場合、以下のようになります。

株式の本店所在地国 配当益課税
日本株(日本) 20%
米国株(米国) 30%
シンガポール株(シンガポール) 0%

上図の場合、日本株と米国株にて配当が生じた場合は、証券会社より自動的に源泉徴収がなされ、残りのネット金額がお客様の口座(ラブアン法人口座)に振り込まれます(※租税協定がある国同士であれば減免対象となります)。

配当の受け皿として資産運用・資産保全会社(プライベートカンパニー)を活用される場合、ラブアン側では配当にかかる税金が非課税、確定申告も不要となりますが、投資先の国によっては課税されてしまうため、最終的に配当にかかる税金を非課税にすることはできません。

この点を誤解されている投資家やコンサルタントの方が非常に多くいらっしゃるようですが、「タックスヘイブンに法人を設立し、法人名義で取引を行えば配当が非課税となる」という説明は明らかに誤りです。

もっとも、配当金にかかる税金を繰り延べ(先送り)する方法はあります。それは、個別株やETF(上場型投資信託)ではなく、再投資型の金融商品」を購入することです。バランス型ファンド等の金融商品は配当金を自動的に再投資に回すため、課税の繰り延べが可能となります。

分配型の金融商品(個別株、ETF、毎月分配型ファンドなど)
配当金が投資家に分配されるため、定期的に配当益課税が源泉徴収される。
再投資型の金融商品(バランス型ファンドなど)
配当金がファンドに再投資されるため分配が行われず、商品を売却するまで課税を繰り延べすることができる。

※再投資型の金融商品は、複利効果を最大限に享受することができるため、長期の積立投資をされる方にはおすすめですが、その一方で運用手数料が若干割高な傾向にあるため、両者のバランスを取っていくことが望まれます。

※分配型ファンドの購入は税制上以外の理由からもおすすめはできません(参考:「分配型ファンドの問題点」)。


 

【証券取引にかかる売却益課税(キャピタルゲイン課税)の取り扱いについて】

売却益課税(キャピタルゲイン課税)の税制上の見解は、配当益課税(インカムゲイン課税)に比べて若干複雑です。まず、ラブアン法人の課税体系は2種類あることは既にご存じの通りかと思います。

・商業活動を行うラブアン法人(Trading Company):監査済純利益の3% または 20,000リンギット
20,000リンギットの納税方法を選択した場合は法定監査義務が免除されます。

(※商業活動:銀行業、保険業、ファンドマネージメント業、リース業等)

・商業活動を行わないラブアン法人(Non Trading Company): 0%(非課税)
商業活動を行わないラブアン法人は、非課税となり、Auditorによる法定監査を受ける必要はありません。

(※非商業活動:ラブアン法人の自己勘定取引による証券取引:株式や債券等、ローン、預金、不動産投資等)

ラブアン法人の設立・管理業務を行う信託会社と協議を行ったところ、売却益課税(キャピタルゲイン課税)の取り扱いについては、信託会社によって見解が2つに分かれました。

・課税対象になるという見解:ラブアン法人であってもキャピタルゲインを目的とした頻繁な証券取引は事業活動に該当し、3%が課税される(可能性がある)
たしかに、マレーシア居住者は不動産関連を除き売却益課税(キャピタルゲイン課税)はありません。

しかし、所得の性質を有する、あるいは取引の性質上投機とみなされる利得は、所得税の課税対象となる場合があります(「参考:JETROホームページ「マレーシア 税制」より)。

したがって、頻繁な証券取引は事業活動に該当するという考え方です。

課税対象にはならないという見解:ラブアン法人が行う証券取引は事業活動に該当しない。したがって、配当益・売却益ともに非課税扱いである
たしかに、モニター画面を見ながら売買の発注を行うのはラブアン法人です。

しかし、実際の株式等の売買手続きはラブアン法人ではなく、証券会社が代理で行うことになります。

したがって、ラブアン法人は事業活動を一切行っていないという考え方です。

なお、協議を行った複数の信託会社から売却益課税(キャピタルゲイン課税)の租税回避スキームとして以下のような提案がありました(※以下の方法は全社の見解が一致したため、情報の精度は非常に高いと思われます)。

①ラブアン法人を持ち株会社として設立する(※持ち株会社=配当を受け取るための専用の会社)
・定款に記載する主な事業目的を「株式等の保有」とし、投資以外の事業活動(Trading Activity)を行わないことを明記する。

・これにより「法人税非課税」「会計監査義務・確定申告ともに不要」となる)。

②マレーシア国外(香港やシンガポールなど)の証券口座を使って証券取引を行う。
・マレーシアの税法では「国外源泉所得非課税の原則」を採用しているため、「国外から得た所得は非課税扱い」となる。

・株式や債券の売買を行っている主体はあくまでも「海外の証券会社」なので、ラブアン法人はマレーシア国内での事業活動を一切行っていない。

上述した①②により、ラブアン法人は配当益(インカムゲイン)・売却益(キャピタルゲイン)ともに非課税扱いとなる。

このように、ラブアン法人は「マレーシア国内での事業活動」及び「マレーシア居住者との取引」を行わない限り、国際取引に対する規制は非常に柔軟なスキームを構築することができます。

例えば、国際分散投資で定期的にリバランスを実施する場合、割高な銘柄を売り、割安な銘柄を買うことにより、ポートフォリオ全体の構成比率を調整する作業が必要になります。この場合、リバランスの段階で売却益が出てしまうと、利益に比例して課税されることになります。

そこで、「国外源泉所得非課税の原則」を採用している国の証券会社を利用することにより、売却益を「二重非課税」とすることが可能になるわけです。

※納税に関しては居住国と法人設立国に準じて申告していただきますようお願い致します。

注意喚起】日本国居住者の皆さまへ
日本国居住者の方は上記の租税回避スキームを利用することはできませんのでご注意ください。

【日本国居住者】
日本の税法では「全世界所得課税方式」が採用されているため、日本国内・海外で得た利益ともに課税されます。

したがって、配当益(=インカムゲイン)・売却益(=キャピタルゲイン)ともに税対象となります。

【マレーシア居住者】
マレーシアの税法では「国外源泉所得非課税方式」が採用されているため、マレーシア国内で得た利益に対してのみ課税されます。

したがって、投資先国での配当益(=インカムゲイン)のみが課税対となり、売却益(=キャピタルゲイン)は非課税となります。

※税法に関しては各国によって制度が異なるため、弊社だけでは結論が出せない部分もございます。詳しくは居住国の税理士等の専門家にご相談ください。

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