アセットアロケーション

人類は歴史上、同じような過ちを何度も繰り返してきました。投資の世界でも同様で、これまでに何度となくバブルや暴落を繰り返してきていることは周知のとおりです。実際に大暴落が起こるたびに、マーケットから退場していく投資家があとを立ちません。

資産運用においてもっとも重要なことは、「市場の誘惑に惑わされず、機械的に運用を継続する」ことにあります。市場の誘惑に惑わされないためには、まず、運用の基本方針と目標を決めることです。そのためには、「どれくらいの期間で、最終的にどれくらいの資産を確保したいのか」を明確に設定しておく必要があります。

アセットアロケーションの検討項目 ・現在の年齢
・運用の目的(何のために運用するのか)
・運用期間(いつまで運用するのか)
・リスク許容度(どの程度のリスクが取れるのか)

ここでは、運用成績に最も影響を与えるアセットアロケーションについて説明します。


 

【アセットアロケーション】

資産運用の結果を決める要因は主に以下の3点に集約されます。

1.銘柄選択 どの商品を買うのか
2.投資タイミング いつ買うのか
3.アセットアロケーション 資産をどのように配分するのか

米国バンガード社が約40年にわたる過去データを分析した研究によれば、「アセットアロケーションの違いが月次リターンの77%の差異を決める」という大変興味深い調査結果が出ています。

つまり、ポートフォリオが投資リターンに与える影響は非常に大きく、リターンの実に80%はポートフォリオの内容で説明できるとしています。なお、多くの方が重視する投資タイミングはわずかに8%程度、ポートフォリオをどのような個別銘柄で実現するかの銘柄選択はわずか6%程度しか投資リターンに影響を与えません。

投資リターンに及ぼす影響力
ポートフォリオの内容 月次リターンの約77%
投資タイミング 月次リターンの約8%
銘柄選択 月次リターンの約6%

多くの投資家は「どの商品を買うのか」「安く買える投資タイミングはいつか」に多くの時間を費やしますが、結果の出る運用を最優先に考えるのであれば、これからはアセットアロケーションに多くの時間を費やしたほうが合理的であると考えられます。


 

【資産配分を考える】

株式、債券、商品等、現在ではそれぞれのアセットクラスに対応するインデックスファンドが存在しているため、それらを組み合わせることによって、誰でも簡単に運用を開始することができます。

すでに、リスクとは投資の世界では「変動」を意味することは説明しましたが、それぞれの性質に合わせ、資産を地域や商品、時期を分散することにより、リスクを低減させる効果が期待できます。さらに、値動きが異なる商品同士を組み合わせることにより、全体としての運用の安定性を確保することが可能です。

もちろん、しっかりとアセットアロケーションを実行したとしても、短期間では価格は大きく上下に変動します。

確率統計上、どのような投資方法であれ運用開始直後の数年間はブレ幅が非常に大きく、利益や損失が予想以上に拡大してしまうことになります。しかし、長期で継続していくことにより、年次リターンのブレ幅は次第に小さくなり、やがて平均収益率へと近づいていきます。

この先マーケットは上がるかもしれませんし、下がるかもしれません。私たちに唯一わかることは、「マーケットは常に変動する」ということです。どのような商品であれ、上がったものはやがて下がり、下がったものはやがて上がります。

したがって、いつまでも暴落が続くことはなく、暴落の翌年には大きく上昇する傾向が高いということです。長期で継続していけば年次リターンのバラツキは小さくなっていき、平均収益率に近づいていきます。

投資家の皆さまは、「長期」・「分散」・「積立」の3点を軸として投資を継続的に実行し、定期的に保有比率を機械的に再調整(リバランス)することにより、「複利効果」と「時間的分散効果」を最大限に享受しながら、ご自身の資産を市場変動リスクから切り離すことが可能となります。


 

【資産配分の例】

一般的に、ポートフォリオの構成比率の基本は、世界各国の国内総生産(GDP)構成比率に準拠させることで各国の経済動向に連動させることができます。また、現在のマーケットで注目されている固有の銘柄などの影響を受けることもありません。さらには、分散比率を定期的に調整することにより、世界経済の成長によるリターンを享受できるようになります。

country_devide asset_devide

アセットアロケーションは特にこれが正解というものはありませんが、「国・地域の分散」・「アセットクラスの分散」の2点がバランス良く分散されていることが望ましいとされています。なお、近年ではインデックスファンドだけではなく、ETF(上場型投資信託)も普及したことにより、世界中の不動産を間接的に保有することも可能となりました。

上記は大雑把な一例ですが、結果の出る運用を考えるのであれば、これからは細かな企業分析などよりもアセットアロケーションに多くの時間を割いていただくことをおすすめします。

アセットアロケーションは運用成績の実に80%に影響を及ぼす非常に重要な作業となるため、ご自身での作業が難しいという方はバランス型ファンドの購入も検討されてみてはいかがでしょうか。

インデックスファンドやETFに比べ手数料は若干割高となりますが、現在ではほとんどがコンピューターの自動売買プログラムによって定期的に配分比率を調整してくれるため手間がかかりません(市場連動型の商品はほとんどが機械による自動売買を行っているため、信託手数料が非常に安く設定されています)。


 

重要:日本から投資する場合の為替リスクについて】

日本から国際分散投資を行う場合、日本の投資家の皆さまは非常に不利な立場にあると考えられます。

その理由は日本という国は為替リスクが極めて特殊な環境に置かれている国だからです。「日本円(JPY)」という通貨は、ひとたび不景気や国際的な経済危機が起こると円高方向に振れるパターンが多く、それが国際分散投資によるリスク分散効果を相殺してしまうことになりかねません。主なポイントは以下の2点に集約できます。

1. 日本が経常黒字国(貿易黒字国)であること
ひとつは、日本が経常黒字国(貿易黒字国)であるために、企業は海外で獲得した外貨をそのまま海外投資に回さない限り、円転(円の買戻し)による経常的な円買い圧力に晒されることになります。

世界的に景気が良ければ日本の企業が稼いだ外貨はそのまま海外での取引や投資に使われるため、円買い圧力は弱まり、結果として円安になります。しかし、経済危機などで世界的に景気が悪くなると、海外での取引や投資が減少し、資金を回収して円転を進めるために、円買い圧力が高まり、結果として円高になります。

世界的な好景気 → 海外での取引が増える → 海外で獲得した外貨をそのまま海外へ投資 → 円安
世界的な不景気 → 海外での取引が減る → 海外で獲得した外貨を回収して国内へ還流 → 円高

さらには、こうした現象は日本国外だけでなく、先の東日本大震災など日本国内で危機が起こったときにも生じます。

日本国内で危機が起こった場合、日本の企業はリスク回避のために海外投資を減らし、日本国内に戻すため、経常黒字から生じる円買い圧力が強まることになります。日本の投資家も国内での損失をカバーするために海外に投資した資金の回収を進めるため、やはり円が買われ、結果として円高になります。

国内での危機 → リスク回避のため海外投資を減らす → 資金を回収して国内へ還流 → 円高
2. 日本が世界最大の対外純債権国であること
もうひとつは、日本が対外純債権国であるため、世界中の国が円を調達し、それを売ってドルなどに交換して経済活動を行っているということです。

ゆえに、世界的に景気が良いときには円売り圧力が高まることになりますが、世界的な経済危機が起こってしまうと、この資金の動きが巻き戻されるために円買い圧力が高まることになり、結果として円高になります。

世界的な好景気 → 世界中の国が円を調達 → ドルなどに交換 → 海外で使う → 円安
世界的な不景気 → 調達した円を戻すため、資金をドルなどから円に交換 → 円高

このとき、リスク回避のために円を買うのは日本の企業や投資家です。

投資家や企業が避けたいのはあくまでも「為替リスク」であるため、為替先物で円のヘッジ買いをすることになります(実際に海外資産を売却することはありません)。このように、実際の資本移転は行われなくとも、リスク回避のための円買いは発生することになります。

このような国際的な資本フローの原則を理解すると、日本円を使って国際分散投資を行う際の最大の敵は為替リスクだということがよくおわかりいただけると思います。

日本から海外へ投資をする場合、世界的な不景気や経済危機が発生してしまうと、「投資対象の価値の下落」とともに円高による「通貨価値の相対的下落」もダブルで損失を被ることになります(つまり、資産防衛のために投資という名目で海外に資産を逃避させても、結果として資産価値が大幅に目減りしてしまうという皮肉な結果になる可能性もあるということです)。

本来は、「アメリカドル(USD)」を基準に投資を行うことが望ましいと言えますが、日本から投資をされる場合は、ある程度の「日本円(JPY)」もキャッシュポジションとしてアセットクラスに組み込まれることを強くおすすめします。世界的な景気後退局面では強力なヘッジ効果が期待できる商品だからです。

devide_currency_domestic devide_currency_overseas

もっとも、今後は人口減少により内需が縮小することを考慮した場合、日本企業の多くは国内事業よりも海外事業を拡大させていくと考えられます。そのため、外貨需要が高まり、日本の経常黒字は減少し、徐々に円買い圧力は弱まっていくと予想されます。

したがって為替リスクを許容できる投資家の方であれば、今のうちから国際分散投資を実行することには一定の経済的合理性があると考えられます。

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