タックスヘイブンと中継貿易

日本をはじめアメリカやヨーロッパなど、主要国が締結している租税条約は必ずしも相互に整合性を持つものではなく、どこかに条約間の歪みが生じることになります。それらを重ね合わせることにより、税の空白地帯(二重非課税の部分)が透かし絵のように浮かび上がってきます。

タックスヘイブンとはまさに、こうした税の空洞化現象がもたらした産物であり、「課税権を主張しない主権国家」という強かな生存戦略を採ることによって、小国ながらも世界経済に大きな影響を与えています。

タックスヘイブンと呼ばれる国や地域は、主だった産業や資源に恵まれない小国や島国に多く点在しており、税金を無税あるいは極めて低い税率にすることにより、企業を誘致し、外貨を獲得する国家戦略を採っています。すなわち、タックスヘイブンの本質とは、主権を利用した国家ビジネスであり、オフショア金融センターという節税商品のツールを世界中の企業や投資家に輸出・販売し、外資獲得の手段としているのです。

多くの方が誤解しているタックスヘイブンとは決して怪しい地域のことではなく、金融取引の世界では一般的に活用されています。新聞やニュースで取り上げられるマネーロンダリングやテロ資金といった犯罪目的での利用は、そのごく一部の例外に過ぎません。

ITインフラの普及とともに国境を越える資金移動がひと昔前に比べて容易になり、情報の非対称性がなくなりつつある現在において、税率が高い地域から低い地域に向かって資金移動が活発化するのはごく自然な流れであるといえるでしょう。実際に、ロンドンのシティをはじめとする世界の主要な金融センターは、そのほとんどがタックスヘイブンとなっており、国際取引による資金移動のうち、実に7割以上の資金がタックスヘイブンを経由して取引されているとも言われています。

このように、今やタックスヘイブンは金融経済の世界には当然のごとく組み込まれており、企業が国際競争力を維持・発展させていくためには、必要不可欠な存在であることは間違いないでしょう。

金融機関や貿易商社などが本国と相手先国との間で直接取引を行わずに、あえてタックスヘイブンを経由させ、間接取引を行っている事実を考えれば、そこには大幅なメリットを享受できる仕組みが存在していることがわかります(※こうした企業の多くはタックスヘイブンを活用し、タックスプランニングを実行していることを自ら公表しています)。

各国で税率が異なるのであれば、相対的に高い税率の国から低い税率の国へと事業活動そのものを移転したほうが節税効果も大きいため、経済的合理性に見合っているからです。さらには、相手先国で得た利益を本国に還流させずに、相手先国よりもさらに税率が低いタックスヘイブンに余剰利益を内部留保すれば、ほとんど税務コストをかけることなく、本国での課税タイミングを先送りできることになります。

オフショア法人を活用するメリット ・本国から低税率国へと利益の源泉を合法的に移転させることが可能
・本国での課税タイミングを合法的に先送りすることが可能

海外へのアウトソーシング(BPOサービス)を例に挙げれば、人件費が割安な国に非主力部門を移転させることによって固定費を削減させることができれば、削減できたコストはすなわち余剰利益となりますから、この場合、利益の源泉は必然的に本国からベトナムやタイ、フィリピンなどの相手先国に移転することになります。

ところが、相手先国で得た余剰利益は本国に還流させてしまうと、国外で獲得できた余剰利益は本国で合算課税の対象となってしまいます。これではリスクを取ってまで文化や商慣習が異なる海外へと、わざわざ業務委託をする本来の意義が薄れてしまうことになります。

そこで、実効税率が高い本国の企業は、第三国のタックスヘイブンに中継貿易拠点(オフショア法人)を作り、削減できたコストを余剰利益としてタックスヘイブンに内部留保し、課税年度のタイミングを先送りすることが可能となるわけです。

◇ 非収益部門を自社で行う場合
税務コスト 運営コスト  純利益
◇ 非収益部門を海外BPOに委託し、直接取引を行った場合
  税務コスト 運営コスト   純利益
◇ 非収益部門を海外BPOに委託し、間接取引を行った場合
税務コスト 運営コスト  海外一時留保金   純利益

このように、タックスヘイブンに内部留保した余剰利益は、本国の企業が赤字になった年度に還流させれば合算課税として相殺させることができるため、課税年度のタイミングを自らコントロールできることは大きなメリットがあるといえます。さらには、タックスヘイブンから再投資に回すことによって複利の効果を最大限に享受できるため、海外投資として効率的に資金を活用する機会を得ることができるようになります。

直接投資として相手先国に自社の請負会社を設立する」、「オフショア法人をそのまま統括会社(海外ミニ本社)として海外進出の足掛かりとする」、あるいは「間接投資として節税効果の高い保険商品を購入し相乗効果を得る」、「オフショアファンドを購入しリスクプレミアムを稼ぐ」、といった新たな収益機会を獲得できるようになり、資金を有効活用するための選択肢が大きく広がって行きます。

このようにして、大企業は中小企業に比べて実行税率を引き下げることができ、留保金を再投資にまわすことによって、税務コストを最小化しながら複利の効果を最大限に享受していることがおわかりいただけるかと思います。大企業は中小企業よりも実行税率が相対的に低く、利益率が相対的に高くなるのは、タックスヘイブンと中継貿易の仕組みを活用したタックスプランニングの恩恵によるところが大きいといえるでしょう。

タックスプランニングの目的 ・企業のポートフォリオをスリム化し純利益を増やすこと
・実効税率を可能なかぎり大企業と同程度に抑えること

上記2点を満たしたタックスプランニングが実行できなければ、大企業との競争に勝てないばかりか、すでにタックスプランニングを実行している同業他社との競争にも苦戦を強いられてしまうことになります。もっとも、大企業はともかくとして、中小企業やベンチャー企業には、わざわざ節税目的のためにタックスヘイブンに中継取引会社を設立するには、現実問題として非常に困難と言わざるを得ません。

いくつかの理由が考えられますが、以下の3点に集約できます。

資金力 まず、資金力の問題です。スキームの構築には会社の設立費用や維持費用がかかるため、それなりに体力のある会社でなければ、会社を運営し、維持していくことが困難です。
税制度 次に、税制上の問題です。タックスヘイブン対策税制や移転価格税制等の適用を回避するためには、しっかりとした専門家によるサポートが必要です。近年では、安易な租税回避目的でのタックスヘイブンの利用は合算課税対象となってしまう可能性があるため、十分注意する必要があります。
運営制度 最後に運営上の問題です。会社を設立し、事業実体を構築し、運営を行っていくためには、現地従業員の雇用・教育はもちろん、業務体制の構築、場合によっては現地国への日本人駐在員の派遣など、それなりの手間がかかることになります。

このように、タックスヘイブンを活用した節税(租税回避)には、上記のバランスを取りながらスキームを構築する必要があり、簡単に実行できる方法でないことはおわかりいただけるかと思います。しかしながら、これからは大企業だけではなく、中小企業も積極的に海外市場を目指す時代です。そのためには、タックスヘイブンや中継貿易の仕組みを活用し、正しくタックスプランニングを行っていく必要があると考えます。

弊社では、主に中小企業の海外事業部の機能を請け負い、お客様に代わってオフショア法人の運用に関する全面的なサポートや電子商取引の中継センターとしてサーバー構築などを行い、タックスプランニングのお手伝いをさせていただきます。

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