BEPS行動計画

BEPS(Base Erosion and Profit Shifting:税源浸食と利益移転) とは、「現地国の税制や国際課税原則の観点からは合法ではあるものの、法人税収を著しく減少させてしまう税源浸食又は利益移転を図るタックスプランニング全般」のことをいいます。

近年のグローバル化により、多国籍企業が利益をタックスヘイブンなどの無税あるいは低税率国に移転させることが容易になったことから、本国での納税額を大幅に削減、場合によってはほぼゼロにする租税裁定機会も多く生まれています。

しかし、その一方で、国内の課税ルールと国際的な課税ルールの相互作用がもたらす予期せぬ効果は、納税者間の不均衡を生み出し、租税制度の整合性に対する信頼に悪影響を及ぼしており、さらには財政健全化を行うために投入できたはずの政府の収入が失われていることなどが懸念されています。

このように、現行の時代遅れとなった課税ルールの空洞化やミスマッチにより、利益を税務上「消失」させたり、企業の経済活動がほとんど、あるいは全く行われていない無税や低税率の国・地域へと移転したりすることが可能な状況になっています。

マネーロンダリング等一部の例外を除けば、これらの租税回避行為はもちろん合法的に行われています。

OECDの報告書によれば、「BEPSの多くは、軽課税国への無形資産の移転、ハイブリッド・ミスマッチの利用等を組み合わせ、税率の低い国・地域に利益を移転することで生じている」と分析し、「多くのBEPSの手法は合法であり、国際課税原則を見直す必要性がある」としています。

出典:「OECD日本政府代表部ウェブサイト」より一部抜粋

そこで、こうした税負担の公平性への問題に対応するため、 OECD において BEPS プロジェクトが発足しました。

BEPS に対応するためには、各国の国内法だけでなく国際課税原則を見直す必要があるため、 OECD は各国が国際的に協調した行動を取るための BEPS 行動計画を策定しました。

BEPS 行動計画は国際租税制度の現行の不備を是正するためのものであり、これらの課題に対処すべく、各国に原則的アプローチに沿った国内的及び国際的な手段を提供するために必要な 15 の具体的行動を定めています。

行動計画1) 電子経済の課税上の課題への対処
電子商取引により、他国から遠隔で販売、サービス提供等の経済活動ができることに鑑みて、電子商取引に対する直接税・間接税のあり方を検討する報告書を作成。
行動計画2) ハイブリッド・ミスマッチの効果の無効化
ハイブリッド・ミスマッチとは、金融商品や事業体に対する複数国間における税務上の取扱いの差異であり、これを利用した税負担の軽減が問題視されている。ハイブリッド・ミスマッチの効果を無効化する国内法上の措置を勧告するとともに、モデル条約の規定を策定する。
行動計画3) 外国子会社合算税制の強化
外国子会社合算税制(一定以下の課税しか受けていない外国子会社への利益移転を防ぐため、外国子会社の利益を親会社の利益に合算)に関して、各国が最低限導入すべき国内法の基準について勧告を策定する。
行動計画4) 利子控除制限ルール
支払利子等の損金算入を制限する措置の設計に関して、各国が最低限導入すべき国内法の基準について勧告を策定する。 また、親子会社間等の金融取引に関する移転価格ガイドラインを策定する。
行動計画5) 有害税制への対抗
OECDの定義する「有害税制」について

① 現在の枠組み(透明性や実質的活動等に焦点)に基づき、加盟国の優遇税制を審査する。

② 現在の枠組み(透明性や実質的活動等に焦点)に基づき、OECD非加盟国を関与させる。

③ 現在の枠組みの改定・追加を検討。

行動計画6) 租税条約の濫用防止
条約締約国でない第三国の個人・法人等が不当に租税条約の特典を享受する濫用を防止するためのモデル条約規定及び国内法に関する勧告を策定する。
行動計画7) 恒久的施設(PE)認定の人為的回避の防止
人為的に恒久的施設の認定を免れることを防止するために、租税条約の恒久的施設(PE:Permanent Establishment)の定義を変更する。
行動計画8) 移転価格税制(無形資産)
親子会社間等で、特許等の無形資産を移転することで生じるBEPSを防止するルールを策定する(移転価格ガイドラインの改訂)。また、価格付けが困難な無形資産の移転に関する特別ルールを策定する。
行動計画9) 移転価格税制(リスクと資本)
親子会社間等のリスクの移転又は資本の過剰な配分によるBEPSを防止する国内法に関する移転価格ガイドラインを策定する。
行動計画10) 移転価格税制(他の租税回避の可能性が高い取引)
非関連者との間では非常に稀にしか発生しない取引や管理報酬の支払いを関与させることで生じるBEPSを防止する国内法に関する移転価格ガイドラインを策定する。
行動計画11) BEPSの規模・経済的効果の分析方法の策定
行動計画12) 義務的開示制度
タックス・プランニングを政府に報告する国内法上の義務規定に関する勧告を策定する。
行動計画13) 多国籍企業の企業情報の文書化
移転価格税制の文書化に関する規定を策定する。多国籍企業に対し、国毎の所得、経済活動、納税額の配分に関する情報を、共通様式に従って各国政府に報告させる。
行動計画14) 相互協議の効果的実施
国際税務の紛争を国家間の相互協議や仲裁により効果的に解決する方法を策定する。
行動計画15) 多数国間協定の策定
BEPS対策措置を効率的に実現させるための多国間協定の開発に関する国際法の課題を分析する。その後、多国間協定案を開発する。

※今後の税法改正は上記に掲載したBEPS行動計画に基づいて行われるものと考えられます。