外国子会社合算税制(タックスヘイブン対策税制)

外国子会社合算税制(タックスへイブン対策税制)とは、「税金が無税または極めて低い税率の国や地域に所在する子会社等を通じた租税回避行為を規制するための制度」のことをいいます。本制度が適用されますと、タックスヘイブンに設立された特定外国子会社等の所得は日本法人及び日本国居住者の所得に合算される仕組みとなっています。

現代のように国境がボーダレス化し、グローバル規模で事業活動を行う多国籍企業の多くは、より低い税率の国や地域に自社の付加価値を移転させ、税負担を軽減させるタックスプラニングが戦略的に行われており、その結果、大企業(多国籍企業)は中小企業に比べて実行税率を軽減させるストラクチャーを構築しています。

たしかに、各国で税率が異なるのであれば、相対的に高い税率の国から低い税率の国(いわゆるタックスヘイブン)へと事業活動そのものを移転したほうが節税効果も大きく、経済的合理性に見合っているといえるでしょう。海外子会社も含めたグループの税引前利益については、できるだけ税率の低い国に配分するのが基本的な考え方です。

とくに日本の法人税は世界的に見ても高税率であるため、こうした低税率の国家や地域があることがわかれば、どの会社もオフショア地域にペーパーカンパニーを設立して、日本法人からオフショア法人へ所得を移してしまうに違いありません。

しかし、上記のような行為を無条件に認めてしまうと日本は法人税収が大幅に減ってしまうため、タックスヘイブン対策税制を導入し、「租税回避目的のオフショア法人の所得については、日本法人の所得とみなして日本で課税する」こととしました(これを「合算課税」といいます)。日本でも1978年度の税制改正により本制度が導入されました。

本制度の施行後、租税回避事件が起きるたびに抜け穴を塞ぐべく、何度となく改正が重ねられてきた経緯があるため、現在ではかなり細かい規定がなされており、簡単には租税回避ができない仕組みになっています。


 

【平成29年制度改正による新ルールの適用】

タックスヘイブン対策税制については、OECDの「BEPS行動計画」を受けて、平成29年度税制改正により大幅な改正が行われました。以下に改正後の新たなルールについて要点を整理しました。

【適用対象】

まず、タックスヘイブン対策税制が適用される可能性があるのは、外国関係会社の株式等の10%以上を直接及び間接保有している場合、または実質支配している場合などです。

外国関係会社
外国関係会社とは、外国法人のうち発行済株式総数等の50%超を内国法人等に保有されているもの、または実質支配されているものなどを指します。

そして、外国関係会社のうち、特定外国関係会社については、基本的に(会社単位の)合算課税の対象となります。ただし、租税負担割合による適用免除があり、租税負担割合が30%以上の場合には合算課税は行われません

特定外国関係会社
特定外国関係会社とは、以下に該当する外国関係会社をいいます。

1. ペーパーカンパニー
2. 事実上のキャッシュボックス
3. ブラックリスト国所在会社

1.は文字通りの意味合いで事業実体のない会社のことをいいます。

2.は総資産に対する受動的所得や金融資産等の割合が高く、経済活動が十分に行われていない(経済活動基準を充足していない)等の会社のことをいいます。

3.は租税の透明性に関して一定水準に満たない国を財務大臣が指定します。

また、外国関係会社のうち、対象外国関係会社についても、(会社単位の)合算課税の対象となりますが、同様に租税負担割合による適用免除があり、租税負担割合が20%以上の場合には合算課税は行われません。

対象外国関係会社
対象外国関係会社とは、特定外国関係会社以外の外国関係会社のうち、経済活動基準を充足しないものをいいます。

したがって、「税率が20%未満(ペーパーカンパニーなどの場合は30%未満)の国に所在し、日系資本が過半を占めるような会社」の株式を10%以上保有するケースなどで、合算課税の対象となるリスクを負ことになります(日系資本とは法人だけでなく日本国居住者の個人も含まれます)。

ここで重要となるのは実行税率ではなく、租税負担割合で合算課税となるか否かが決まります。

租税負担割合
租税負担割合とは、適用免除の判定に際して、30%または20%という基準と比較すべき租税負担割合は、各国の法定税率ではなく、その海外子会社固有のものです。

租税負担割合 = 所得に対して課税される源泉税/現地法令上の課税所得+非課税所得(非課税配当除く)

分母については、課税所得だけでなく、現地で税金が課されない非課税所得(※)が含まれている点がポイントです(ただし非課税配当は除外されています)。

※ 新興国は、税制上の優遇措置により外資誘致を進める傾向があるため、多くの新興国では何らかの優遇措置を有しています(例:マレーシアのMSCステータス保有法人、フィリピンのPEZA法人など)。税制優遇のタイプは多岐にわたりますが、典型的なのは一定期間法人税を減免する制度であり、一般に「TAX HOLIDAY」と呼ばれます。海外子会社に低税率の優遇税率が適用された場合、その実行税率は法定税率よりも低くなり、税率の低い国に子会社を設立するのと同様の効果が得られます。この場合、注意点としては新興国のこのような優遇税制を適用させて、グループ全体の実行税率を引き下げる場合でも、租税負担割合に影響を与えることから、タックスヘイブンに子会社を設立する場合と同様、合算課税に注意を払う必要があります。

経済活動基準とは?
タックスヘイブン対策税制には「経済活動基準」(平成29年度税制改正前の「適用除外要件」)があり、特定外国関係会社以外の外国関係会社が会社単位の合算課税を回避できるケースが定められています。

【経済活動基準】(旧:適用除外要件)

本制度の趣旨は上述したとおり租税回避(不自然な節税スキーム)の防止目的にあるため、特定外国子会社等がたとえ現地での租税負担が低くても、租税負担軽減のために存在しているのではなく、その存在に経済的合理性が認められるのであれば、あえて本制度に基づく合算課税を行う必要はないということになります。

そこで以下に掲げる基準(いわゆる「適用除外基準」)をすべて満たす外国子会社等は、タックスヘイブン対策税制の適用から除外されることとされています(※4と5は業種に応じていずれかが適用されます)[※1]。

経済活動基準 チェックする内容
1. 事業基準 株式・債券の保有、工業所有権・著作権等の提供、船舶・航空機の貸付を主たる事業とするものでないこと。
2. 実体基準 本店所在地国において、その主たる事業を行うに必要と認められる事務所、店舗、工場その他の固定施設を有していること[※2] 。
3. 管理支配基準 本店所在国において、事業の管理、支配および運営を自ら行っていること[※2]。
4. 非関連者基準 卸売業など7業種〈卸売業、銀行業、信託業、証券業、保険業、水運業、航空運送業〉。主として取引の過半を関連者以外の者と行なっていること)または(b)所在地国基準(上記7業種以外の業種。主として本店所在地国で事業を行っていること)
5. 所在地国基準 上記7業種以外の業種を、主として本店所在地国で事業を行っていること

具体的には、必須要件として上記1.~5.があり、さらにその外国関係会社の業種に応じて非関連者基準または所在地国基準のいずれかを満たす必要があります。

受動的所得とは?
外国関係会社のうち、特定外国関係会社以外で、租税負担割合が20%未満のものについては、経済活動基準を充足すれば会社単位の合算課税の対象とはなりません。しかしながら、経済活動基準を充足したとしても、一定の利子や配当等の「受動的所得」(平成29年度税制改正前の「資産性所得」)と呼ばれる一定の所得は合算課税の対象となります(このような外国関係会社は「部分対象外国関係会社」と呼ばれます)。

受動的所得を目的とした会社、つまり海外子会社に資産運用させると、運用益がこの資産性所得の合算課税に引っ掛かります。この受動的所得の範囲は平成29年度税制改正により拡大されているので注意が必要です。

平成29年度税制改正のまとめ
タックスヘイブン対策税制については、平成29年度税制改正により制度の枠組みに関する大きな改正が行われることになりましたが、企業への影響は限定的とする見方もあります。例として、旧制度における「トリガー税率」の撤廃(租税負担割合20%未満)という概念は廃止されたものの、新制度においても、租税負担割合が20%以上である場合には、(特定外国関係会社を除き)会社単位及び受動的所得の合算課税の適用が免除されるなど、実務上の検討フローは従来と大きく変わらない可能性もあるからです。

しかしながら、平成29年度税制改正により、「実質支配関係」という概念が導入され、適用対象範囲が拡大されたほか、受動的所得(旧制度における「資産性所得」)の範囲も拡大されるなど、影響を無視できない点もありそうです。

※1 平成22年度税制改正において適用除外基準が見直され、地域統括会社も事業基準又は非関連者基準を満たせるようになり、その結果、タックスヘイブン対策税制の対象から除外できるようになりました。参考:「統括会社について」)。

※2 タックスヘイブン国のレンタルオフィスを契約し、机1台分の事務スペースとパソコン、モデム、携帯電話2台が実体基準として認められた判例が存在します(レンタルオフィス事件:東京地判平成24年10月11日)。この判例からは、「実体基準の固定施設は必ずしも自己で所有している必要はなく、固定施設の規模も主たる事業の業種や形態により異なる」と考えられ、特定外国子会社等が使用している固定施設が必要な規模を満たしているか否かについては、特定外国子会社等の行う主たる事業の業種や形態に応じて判断されることになります。

なお、当事件は最終的に東京地裁と東京高裁で敗訴となりましたが、裁判所は棄却の理由として以下の点を指摘しています。

実体基準 この「最小の」ビジネス単位とも言える状態(固定資産が僅か机とパソコン各1台のみ)であったとしても、規模が大きくない卸売業を行う事は充分可能であった
管理支配基準 派遣社員に販売や仕入れを行うだけでなく、一定の裁量権限が与えられていたため、この会社があえて直接雇用をする必要は無かった
指示命令系統が派遣社員に対して株式を保有したレンタルオフィスの会社役員が行っていた