国外転出時課税制度(出国税)

2014年の税制改正大綱により、2015年7月1日より国外転出時課税制度、いわゆる「出国税」の導入を開始しました。

本制度は「多額の有価証券を保有する個人が日本国外に居住地を移転する場合、その時点で株式を譲渡したものとみなして課税される仕組み」のことをいいます。出国税導入の目的は、海外移住による課税逃れを取り締まるための対策であることは明らかです。

たとえば、日本では株式などを売却した際に、売却益の20%(所得税15%+住民税5%)として課税される仕組みになっていますが、海外にはキャピタルゲイン(売却益)に対して課税されない国や地域も少なからず存在しています[※1]。

つまり、今までは日本で株式を購入し、キャピタルゲインが非課税となる国や地域に居住地を移転した後に売却すれば、本来であれば日本に支払うべきキャピタルゲイン課税を回避することが可能となっていました。

このような課税逃れを防止する目的から、有価証券を大量に保有している状態で海外に移住した場合、日本を出国する時点で売却していなくても含み益に所得税を課税することにより、租税回避行為を取り締まることが本制度の目的です。

なお、適用対象となるのは、「出国時点」で「1億円以上相当の有価証券を保有」している「長期滞在者」のみが適用対象となっており、旅行者や出張者などの短期滞在者は適用対象外となっています。

もっとも、1億円以上相当の有価証券を保有している方は全体数としてはそれほど多くはないため、影響は限定的であるといえますが、長期投資を行っている投資家は海外移住の際に大きな影響を受けることになります。

たしかに、出国税は海外移住による課税逃れを取り締まるための制度として導入されたものではありますが、本制度の最大の問題点としては、「出国税は動機に関係なく課税される」ため、1億円以上の有価証券を保有して海外に移住する方は、これからは出国税を支払わなくてはならないのです。

ただし出国税として徴収されるのは所得税(国税)に該当する15%の部分だけで、住民税(地方税)5%は適用対象外となっています。その意味では、考えようによっては5%分の節税対策にはなります。しかしそれでも、10億円分の株式を保有していた場合、出国時に1億5000万円、100億円の株式を保有していた場合では、実に15億円もの税金が取られることになります。

数億円単位の有価証券を保有したまま海外に移住する方は、動機に関係なく課税されてしまうため注意が必要です。

※ 仮想通貨関連の詳細は「ビットコインなどの仮想通貨が国外転出時課税(出国税)の対象資産となるか否かについて」を併せてご参照ください。

※1 キャピタルゲインが非課税となる国や地域は一般的に無税または低税率が著しく低いタックスヘイブン(租税回避地)に多く存在しています。なお、日本国国税庁の基準では所得税率(法人税率)が20%以下の国や地域が対象とされており、アジアでは香港(16.5%)やシンガポール(17%)が有名で、ラブアンもタックスヘイブンに含まれます。なお、ラブアンが帰属するマレーシアは、所得税率(法人税率)が24%のため、タックスヘイブンとはみなされないものの、香港やシンガポールと同様、「オフショア所得非課税」を採用している国家となっており、マレーシア居住者やマレーシア法人がマレーシア国外から獲得した利益・所得について、マレーシアでは非課税となっています。