国外送金等調書制度

1998年に「国外送金等調書制度(内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律)」が施行されました。

この制度は「外為法の改正により、国境を越える資金の移動が自由となったため、所得税・法人税・相続税その他の内国税の適正な確保を図ること」を目的として導入されました。

これにより、銀行などの金融機関や資金移動業者は、100万円を超える国外送金等があった場合に所轄税務署長に報告する義務があり(2009年3月までは200万円超)、また、これによって国外送金をした当事者に対して「国外送金等に関するお尋ね」が送付されることがあります。

具体的に、銀行が税務署に提出する「国外送金等調書」には、以下のような内容が記載されます。

国外送金調書

記載項目例:

・ 国外送金か、国外からの送金の受領(入金)の別
・ 国外の送金者、または受領者の氏名・名称
・ 国外の銀行等の営業所(支店)の名称、取り次ぎ金融機関の名称
・ 国外送金等にかかる相手国
・ 本人口座の種類、口座番号
・ 国外送金等の金額:外貨種類、外貨額、円換算額
・ 送金原因 など

この調書を受け取った税務当局は、上記の情報から「国外送金等に関するお尋ね」を作成し、対象者宛に送付します。このお尋ねでは、確定申告の有無や、具体的な送金等の取引内容を確認してきます。

また同時に、具体的な送金明細や取引内容を証明するための書類のコピーの添付も提出することが求められています。

2009年度(平成21年)には提出基準額が200万円超から100万円超に大幅に引き下げられたことにより提出件数は一気に激増、この「お尋ね」を避けるために、送金額を1回当たり100万円以下に調整したり、あるいはハンドキャリーで国外へ持ち出した方も多くいたと言われています(100万円以上を持ちだす場合には税関へ届出が必要となります)。

万が一、税務署から「お尋ね」が届くことがあれば、正直に事実を回答することが大切です。調書には実際の取引内容を記入すれば問題ありません。この段階では、単なる事実確認であるため、送金(入金)の事実を提出しただけでは、実際に海外所得を得ていないかぎり、納税義務が発生することはありません。

税務当局はこうした事実確認を元に納税者の資産の管理をしているため、翌年以降の運用収益が無申告になったり、相続時に財産が申告されていなかったりした場合は、将来に大きな支障をきたすことになりかねません。

金融機関に報告対象国(OECD加盟国等)の居住者の口座について、「氏名、住所、生年月日、居住国の納税者番号、口座の残高と年間収入の税務当局への報告を義務付け(日本では2017年から適用)、これに伴い、日本人が相手国に有する口座情報も、その国の税務当局を経由して、日本国の税務当局に報告されることになる」とされています。

調書を正確に記載しなければ、本来納付すべき税金に加え、追徴課税や、本来の納付すべき期限から実際の納付日までの延滞税などが発生することになります。

世界的な課税強化の流れの中で、納税者には適正に申告していくことが求められています。

 

※日本国居住者(納税義務者)のなかには国家の財政破綻や富裕層税等の導入を懸念し、また相続税や贈与税の回避目的で海外口座を密かに開設し、海外投資という名のもとに日本国外へとキャピタルフライトを検討される方も多くなっていると聞きます。

先述したとおり、現在の国外送金等調書制度では100万円を超える金額を日本国内の口座から海外に送金する場合(あるいは海外からの送金を受け取る場合)、送金元(受取先)の金融機関から税務署に支払調書が提出される仕組みになっています。そのため、100万円を超える場合は複数回に分けて送金を行うことにより調書の提出を回避するといったケースも多く見られます。

ところが、2016年(平成28年)1月よりマイナンバーの運用が開始され、日本国内にある銀行口座や証券口座で、国外送金や国外からの送金等の受領をする場合は、原則として個人番号か法人番号が必要となるように規定されることが予定されているため、今後は実質的に100万円の上限規定はなくなることになります(参考:「社会保障・税番号制度」)。