ナジブ首相発表によるLABUAN DEVELOPMENT BLUEPRINT 2030について

昨日1月18日、マレーシアのナジブ・アブドゥル・ラザク現首相(以下「ナジブ首相」と表記)がラブアン島を訪問し、年内に行われる総選挙に先立ち、マレーシアの金融機能を有するラブアン島の経済を多様化するため、「マニフェスト(≒選挙公約)」を発表しました。

ラブアンのために新しいアイデアに介入し、創造しなければならない。2030年までのブループリントはラブアンにとってより良い未来を創造し、私たちはラブアンに本当の変化をもたらします

今回のブループリント(青写真)の最大の要点として、ラブアン島を対岸のボルネオ島北東部に位置するサバ州ムヌンボック岬に接続する約11kmの橋を架けるプロジェクトを提案しています。

また、ラブアン島の実体経済を強化するため、「教育」「航空」「観光」「ヘルスケア」「メタノール」の産業誘致と振興を進める方針です。

ナジブ首相は、東マレーシアの主要地域であるサバ州とサラワク州の沖合に浮かぶラブアン島について、今後12年間(2030年まで)にわたるラブアン開発のブループリントの詳細について30分程度の講演を行いました。

西マレーシア(半島側)と比較して、何かと開発計画を後回しにされてしまう東マレーシア(島側)ですが、今回の訪問は、東マレーシアの人々が持つそのような潜在的な不満や不公平感を取り除く意図があったと言われています。

なお、サバ州とサラワク州はマレーシア議会における3分の1以上の議席数を占めており、マレーシアの総選挙は5月までに予定されています。現在の内閣支持率を考えると、選挙対策を意識した訪問であることは明らかでしょう。

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【ハブ機能の多様化と新たな雇用創出へ】

ラブアン経済は伝統的に石油・ガス産業の恩恵を受け、四半世紀にわたり著しい成長を遂げてきましたが、その後2014年から2015年にかけて石油・ガス価格の低迷により壊滅的なダメージを受けることとなります。

さらに昨年(2017年2月)には、石油・ガス価格の暴落の結果として、住民の10,000人以上(10%)が失業に追い込まれ、これらの産業に従事していた方々はその大多数がラブアン島から離れてしまい、その結果、飲食店の閉鎖が相次ぐなど、実体経済は慢性的な不況に陥っています。公式データによれば、ラブアンの失業率は2016年に7.8%となり、マレーシア全国平均の2倍以上の水準となっています。

このような現状を考慮し、今回のブループリントは、銀行、保険、金融などの業界に対して低税率のラブアンを、サバ州とサラワク州の経済に統合することを目指しており、島民の10%程度をラブアンオフショア関係で雇用を創出したい方針のようです。

(画像引用:LABUAN IBFC「Labuan IBFC to unveil transformational plan」より)

ブループリントには2015~2030年の具体的な数値目標も盛り込まれ、ラブアンの島内人口を現在の約94,600人から約150,000人(年率3.1%増)、就労人口を約39,500人から70,500人(同3.9%増)、島民1人当たりの国内総生産(GDP)を54,112RM(約152万2,303円)から94,127RM(同3.8%増)に増やす計画とのことです。

ラブアンの2015年~2030年までの数値目標
  2015年 2020年 2025年 2030年
島内人口(人) 94,600 106,000 139,000 150,000
就労人口(人 )  39,500 45,000 63,940 70,500
1人あたりGDP(RM) 54,112 64,623 70,755 94,127
(参考:NNA POWER ASIA「ラブアン、実体経済の強化へ 脱金融・石油依存を推進」)

現在、ラブアン法人の「ガイドライン2015」によれば、外国人の就労ビザ発給にはローカルスタッフの雇用義務が課されておりませんが、場合によっては今後、雇用要件が追加される可能性もあります。

2015年2月改定ガイドラインによるラブアン法人就労ビザの申請要件
1. ラブアン法人の資本金を250,000RM相当(USドル換算)以上に設定すること
2. 取締役の給料を月額10,000RM以上に規定すること(※うち3,000RMは役員報酬として非課税措置が可能)
3. 3年間の財務予測、組織図を含む事業計画書及び取締役の役割と責任を記載した職務経歴書を提出すること
4. 就労ビザ取得後1ヶ月以内に、ラブアン島内に管理事務所を設置すること
5. 西マレーシア(クアラルンプール又はイスカンダル地域)にマーケティングオフィスを設置すること

※西マレーシアに移住を希望する場合のみ

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ボルネオ島本土との架け橋

今回のブループリントの最大の要点としては、ラブアン島を対岸のボルネオ島北東部に位置するサバ州ムヌンボック岬に接続する約11kmの橋を架けるプロジェクトを提案しています。ナジブ首相は講演のなかでこのプロジェクトを「汎ボルネオハイウェイの延長線」と表現しました。

(画像引用:BORNEO POST「China firm to build Labuan Bridge」より)

マレーシアの威信をかけた野心的なプロジェクトであり、全長5,324kmにも及ぶ汎ボルネオハイウェイ構想(Pan- Borneo Highway Concept)は、東マレーシア横断を目指して急ピッチで建設が進められており、ナジブ政権はすでに両州政府に自治権を引き渡しています(全線開通は2019年7月頃の見込みです)。

(画像引用:eTAWAU「Pan-Borneo Highway」より)

もし、この構想が実現すれば、中国からの観光客が増加傾向にあるサバ州と陸路で結ばれ、ラブアン観光をオプションとして付け加えることで、ラブアン島には大きな観光収入による経済効果が期待できることになります。

つまり、ボルネオ島本土との架け橋こそがラブアンにとっての救世主となるわけです(下記写真の対岸中央右の突き出ている部分が11km先のサバ州ムヌンボック岬、建設予定地周辺より撮影)。

しかしながら、橋の建設には経済効果に疑問視する声も多く、さらには、現在ラブアン島とムヌンボック岬の橋渡しを担っているフェリー業者やスピードボート業者などからは反発の声も上がっており、これらの方々の雇用をどのように守っていくかという課題も残されています(下記写真はラブアン沖を行き交うフェリーとスピードボート、この風物詩もやがて過去の遺産となるのかもしれません。ラブアンタイムズスクエアより撮影)。

このブループリントはまた、世界有数のダイビングスポットなどのウォータースポーツイベントを通じ、さらなる税制優遇措置や観光促進を含む措置を講じて、金融サービスの変革を促すことになると言われています。

(画像引用:LABUAN IBFC「Labuan IBFC to unveil transformational plan」より)

現時点でLABUAN IBFCから公開されている情報は、「教育・航空・ハラル・石油ガスの4産業に限りラブアンの税制優遇措置とリンクする政策を実施する予定である」ということだけです。

※本来は外貨規制関連の発表が予定されていましたが、大人の事情により講演直前に急遽取り扱わないこととなりました。近日中にLABUAN IBFCより公式発表があり次第、お知らせします。

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何かと大風呂敷を広げ、巨大プロジェクトを次々に掲げるマレーシア政府ですが、今回はラブアン島民の期待を裏切らずにプロジェクトは予定通り遂行されていくのでしょうか?

今回の講演は参加者全員にくじが配られ、車やバイク、iPhoneなどが景品として用意されました。参加した島民の多くは「ナジブ政権の政治政策よりも景品に興味があるから来た」という笑えない話もあちこちから聞こえてきます。

さて、プロジェクトが完成する2030年以前に、次回の総選挙でナジブ首相は無事再選を果たせるのでしょうか?

以上、ラブアン島より報告でした。