海外移住はイバラの道

海外移住により贈与・相続税の非課税要件を満たすためには、贈与人(相続人)と被贈与人(被相続人)の両方が日本国の非居住者として10年以上海外で暮らさなければなりません。それでも、多くの富裕層が移住していることを考えれば、海外移住というのは魅力的な選択肢なのかもしれません。

しかし、あまり知られてはいませんが、せっかく海外移住をしたにも関わらず、贈与税や相続税が免税となる10年以上の滞在要件を満たさずに途中で帰国されるケースが増えていることも事実です。移住を断念した主な理由は以下のようなものが挙げられます。

◇ 日本語が通じない
日本語は日本以外の国では基本的には通じません。したがって、英語や現地語の習得が最低限必要になります。すでに話せる方であれば問題ありませんが、ゼロから習得を志す高齢者の方にとってはハードルが高いかもしれません。
◇ 現地の生活環境に馴染めない
海外に出ると異なる民族同士がバランスを取り、互いの文化を尊重しつつ、適度な距離を置きながら暮らしています。そのため、異文化に対する理解や寛容さが求められます。郷に入れば郷に従えという諺がある通り、違う国に住むのならば、その国の常識から考えないと思わぬトラブルを招く原因となります。また、こうした現地の生活環境に馴染めず、うつ状態になってしまう方も多くいます。
◇ 食事の問題
食文化はアイデンティティーと密接に関係しています。やはり、日本人である以上、日本食とは切っても切り離せないという方が多いのではないでしょうか?海外では日本から食材を輸入していることが多いため、必然的に日本料理は割高にならざるを得ません。なお、日本料理は素材の鮮度を保つことが難しいうえに、日本の味を完璧に再現できる料理人を確保することが難しいという問題があります。したがって、現地の日本料理が口に合わないということもよくあります。
◇ 子どもの教育問題
お子様がいる場合は、現地の日本人学校やインターナショナルスクールへの転校手続、さらには将来の進路などを考慮しておく必要があります。最も、国際バカロレア認定のインターナショナルスクールであれば、修了時に世界の多数の大学に無試験で入学できるため、この点、メリットは大きいともいえます。
◇ 子どもの兵役義務
移住後にお子様の兵役義務があることを知る方もいらっしゃいます。お子様がいる場合は、将来的に兵役義務が生じる場合がありますのでご注意ください。富裕層の移住に人気の国:シンガポールには兵役義務があります。
◇ 医療機関の問題
何といっても、緊急時に母国語を使えない環境は相当辛いものがあります。日本のように日本語を使って診察を受けられるケースは稀で、医療レベルも日本ほど高くないケースもあります。なお、海外では保険が適用されない病院もありますので注意が必要です。特に、持病をお持ちの方など、頻繁に医療サービスを受ける方には辛い問題です。
◇ 飽きやすい
日本のように四季がある国はあまり多くないため、変化のない暮らしが始まります。さらに低税率国は赤道に近い亜熱帯の国や地域が多いため、暑すぎるという問題があります。また、こうした国は国土が非常に狭く、日本ほど娯楽が多くないために飽きやすいという問題があります。

以上、実際に移住を断念した理由で多かったものを挙げましたが、租税回避目的での海外移住が失敗する最も大きな原因は、動機そのものが前向きではないからかもしれません。結局のところ、生まれ育った日本で何不自由なく暮らしたいというのが本音ではないでしょうか?

それでも海外移住を覚悟できる方であれば、税金の問題を簡単に解決することができますので、節税スキームとしては魅力的な選択肢であることは間違いありません。海外移住は海外旅行の延長線上にあるといった安易な考え方は禁物です。そのため、しっかりした心構えが必要になります。現在の資産や収入、さらには居住環境などを考慮してバランスの取れた移住計画を立てることが重要であると考えます。

したがって、いきなり移住をするのではなく、まずは2~3ヵ月程度の「試住(プチ移住)」をして、実際に現地での暮らしを体験してみることを強くおすすめします。

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