マレーシアへの移住

贈与税・相続税を非課税とする目的で10年以上の海外移住を検討される場合、考慮すべき点は一般的に以下の4点に集約されます。

海外移住で考慮すべき点 移住先の治安情勢はどうなっているのか?
移住先の税制度はどうなっているのか?
精神的に10年以上も長期滞在に耐えられるのか?
物理的に10年以上も生活水準を維持できるのか?

まず、移住される国の治安情勢が悪く、犯罪が多発している国であっては命そのものを危険に晒すことになりかねません。いくらお金が大事とはいえ、殺人や犯罪に巻き込まれ、結果として命そのものを失ってしまっては本末転倒です。

次に、移住先の国で所得税・住民税が無税あるいは低税率であること、また、贈与税・相続税が非課税扱いとなることが理想です。移住先の国で収入を得た場合、必然的に所得税や住民税も考慮する必要があること、また、贈与税・相続税が課税されてしまっては移住目的そのものを失ってしまいます。

さらに、住みにくい国に移住してしまうと、10年間の滞在要件を満たす前に、途中で挫折してしまう可能性が高いといえます。最悪のパターンですが、節税スキームの構築に費やしたお金や時間を大幅に失ってしまうことになります。これでは本末転倒です。10年という歳月は、決して短い時間ではないため、しっかりとした移住先の見極めが必要となります。

最後に、税金が安い国は予想以上に物価が高く、両者のバランスを相殺することで国家全体の歳入バランスを取っているケースがほとんどです。ここは以外な盲点です。いざ、節税対策で移住したものの、生活を維持するための費用が予想以上にかかってしまうと、結果として節税効果が低減してしまい、最終的に贈与できる財産を目減りさせてしまうことになります。

したがって、これらの条件から導き出される結論として、最も理想的な移住先とは「税金と物価が安く、住みやすい国」であるといえるでしょう。

しかし、世界中のどこを探せばそんな都合の良い国があるのでしょうか?残念ながら、上記すべての条件を満たす理想的な国家など存在しません。


 

【シンガポール(アジア地域)】

まず、移住先として人気の高い東南アジアのシンガポールは、治安や税率の観点からは非常にバランスが取れていますが、家賃、食費など日常生活全般において物価が高いため、よほどの資金力がないと生活水準を維持することが困難です。また、国土が狭く、移民できる人数が限られているため、近年ではビザ取得・更新のハードルが一気に上がっています。シンガポールでは日本と同様の生活水準を維持するためには最低でも2~3倍以上の維持費がかかることを覚悟する必要があります。なお、香港も富裕層の移住先として人気がありますが、シンガポールと同様に全体的に物価が上昇傾向にあるため、それなりの滞在費を覚悟する必要があります。香港は金銭で物事が解決できるケースも多々あるため、シンガポールよりは移住のハードルが低いといえるかもしれません。これらの国は、海外投資の受け皿として法人の設立を検討されている方にはおすすめです。


 

【アラブ首長国連邦(中東地域)】

同様の理由から中東UAE(アラブ首長国連邦)のドバイなども税金が存在しませんが、最低でもシンガポールの1.2~1.5倍程度と非常に物価水準が上がっています。さらに、中東は夏になると気温が40℃を超えてくるため、日中は必然的に家の中で過ごす時間が長くなります。そのため、一定水準の居住環境を確保できなければ移住を断念してしまう可能性が高いと言わざるを得ません。なお、UAEではドバイを始め、アジュマーン、ラアス・アル=ハイマといった各首長国内にフリーゾーンと呼ばれる経済特区を設けており、特区内で設立した会社は法人税が最大50年間非課税扱いとなるため、居住目的ではなく、法人を設立し投資目的で活用される場合にはおすすめです。


 

【オーストラリア(オセアニア地域)】

また、南半球オセアニア地域のオーストラリアやニュージーランドはライフスタイルの素晴らしさから、長期滞在に向いている国といえます。一度住み始めるとそのまま居住する方が大半で、あまり移住を断念したという話は聞きません。国土が広く、温暖な気候であり、居住環境に適しているといえます。しかし、その一方で、これらの国ではひと昔前の移住ブーム当時に比べて物価が著しく高騰してしまったため、生活を維持するのが非常に困難な状況になっています。もっとも、この両国は政策金利が非常に高いため、数億円単位で国債・社債等の債券を保有できる方であれば、これだけでも十分な生活資金(不労所得)を確保できますので、移住先としてはおすすめです。


 

【モナコ(ヨーロッパ地域)】

さらに、ヨーロッパのモナコも富裕層の誘致を国策として掲げており、移住者の多くが億万長者という非常に洗練された国家です。地中海沿岸の温暖な気候に加え、個人の所得税や親族に対する相続税も非課税のため、富裕層の移住先として人気があります。ただし、治安が良すぎる反面、警察が居住実態を常時調査しており、長期間留守にしていることが発覚した場合は居住権が取り消されること、さらに品の悪い行為を行ってしまうと直ちに国外退去を命じられるといった究極の監視国家でもあります。なお、モナコは国家歳入の過半数を大量の消費活動による付加価値税(VAT)で賄っているため、租税回避目的でやって来た倹約思考の富裕層はお断りというのが暗黙のルールとなっています。

以上のように、どの国・地域にも一長一短あり、治安の良い国は物価が高いなど、妥協するポイントは人それぞれ異なってきます。また、ひと昔前の移住ブームに比べると、これらの国では生活水準を維持することが著しく困難となっています。

こうした理由から、近年では比較的治安もよく、物価の安いマレーシアを移住先に選択する日本人富裕層が増加傾向にあるようです。


 

【マレーシア(アジア地域)】

マレーシアは、ここ数年の日本人移住ランキングを見ても常に上位にランクインしており、中間所得層を中心に、10年間滞在可能なMM2H(マレーシア・マイ・セカンド・ホーム)というリタイアメントビザを取得し、家族で移住するケースが増えています。このビザは就労ビザではありませんが、会社のオーナーになることはできます。また、マレーシア法人(SDN BHD)を設立し、オーナーである自分宛に就労ビザを発給し、移住するといった選択肢をとっている方も一定数います。ただし、マレーシアの物価は日本の3分の1程度と言われていた時代もありましたが、近年の経済発展と急激な円安の影響により、現在では2分の1程度まで物価水準は上昇しており、ひと昔前ほどの物価安のメリットは薄れてきていることも事実です。

※MM2Hでマレーシアへのロングステイを検討されている方は「MM2Hとラブアン就労ビザ」も併せてご参照ください。

マレーシアの基本情報は以下のとおりです(外務省データを元に作成)。

概要
  • 複合民族国家であるマレーシアでは、宗教を軸に国民気質も多様性に富む。主流であるマレー系の人々の文化はイスラム教に基づき、戒律は厳しく、人々はコーランの教えである六信五行を日常生活の礎としている。
  • 一方、中華系の人々はコミュニティー意識が強く、住民の大半が中国系で形成される街も多い。インド系も同様で、インド南部から移住してきたタミル人やテルグ人がそれぞれの共同体を形成し共存をはかっている。
面積
  • 約33万平方キロメートル(日本の9割弱)
  • 国土の4分の3が森林と湿地帯。西マレーシア(マレー半島)は北部をタイ、南部をシンガポールと、東マレーシア(ボルネオ島)はブルネイ、インドネシアと国境を接している。
人口
  • 2,995万人(2013年マレーシア統計局)
  • 8割以上が西マレーシアに、2割弱が東マレーシアに住む。
首都 クアラルンプール
通貨 マレーシアリンギット
民族
  • マレー系(約67%※)、中国系(約25%)、インド系(約7%)
  • (※マレー系には中国系及びインド系を除く他民族を含む)
  • 東マレーシアではマレー人の比率が少なく、かわりにイバン族やカダザン族などの先住民族の割合が高い。
言語
  • マレー語(公用語)、中国語、タミル語
  • 英語教育の水準も高く、都市部や観光地では英語が広く通用する。
宗教 イスラム教(国教)(61%)、仏教(20%)、キリスト教(9.0%)、ヒンドゥー教(6.0%)、儒教・道教(1.0%)、その他
政治
  • 立憲君主制(議会制民主主義)
  • 憲法上、国家元首(国王)がペナン州、マラッカ州、サバ州、サラワク州を除く9州のスルタン(統治者)の中から選出される(任期は5年)
経済
  • 1980年代後半より急速な工業化を果たし、工業製品の輸出が経済成長を牽引
  • 1人あたりのGDPは10,548USドル(2013年)、ASEAN第3位

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